CONCEPTION

                    清水邸  設計主旨

敷地は住宅、工場等が密集した地域にあり南北軸に細長い「うなぎの寝床」のような形状をしています。南西側の隣地は施主の親戚であり敷地境から双方1mずつ建物を離し路地空間を形成していました。家族構成は施主夫婦、小学生の子供2人、祖母の5人家族です。近隣の人々との交流は比較的多く下町的コミュニテイが残っている状況でした。概略以上のような条件を基本としプランを進め自然とコートハウス的プランが生まれてきました。
 採光、通風、プライバシーの確保と同時に内と外のコミュニテイに対する対応策として中庭を提案しました。中庭を挟んで南側は平屋の祖母の棟となっており北側は1階に居間半階上がって、食堂、浴室等の生活空間となっています。2階に夫婦の寝室、子供室があります。南棟と北棟の繋ぎの棟は、廊下玄関、収納に充てて合理的に機能させています。


 祖母の部屋は和室とし、南東側の高窓から天井の障子を介して柔らかな光が入るようになっており、夜は高窓の上に取り付けた照明器具により障子面が光り天井となります。南西側の窓は親戚の家の庭を借景とし濡れ縁を交流の場として考えました。双方の私生活は見えない窓の位置となっています。又この和室は格式的な接客空間ともなり得る事を意識しました。北側の居間から南側の中庭を介して祖母の部屋の様子が見て取れるようになっています。同様に祖母の部屋から居間の様子が伺えます。食堂は半階上がることにより居間に立ち寄りに来た客の視線を遮る事が出来ています。又、物干し場は2階寝室前のバルコニーにする事により、主な生活空間の視界から見えない位置となるよう設定しました。車庫を半地階に設けて生じたスッキプフロア‐の断面が最大限有効になるよう計画出来たと思います。内壁は構造用合板のO.S.B.を下地としサンダ‐掛けO.S.B.目透かし張りを仕上げとする事でローコストを実現し、南棟とは対比的なポップなインテリァの空間となっています。外壁は防火地域の規定に合う押出中空成形セメント版素地として周囲の環境に馴染ませました


 中庭は当初雨水、上水を貯め水を張り水面から反射した光が居間の奥の食堂まで届くような静的な演出が出来るよう考えていましたが居間の開口部、玄関の上框、和室の縁側など気軽に着座できるよう設定したためか完成後、屋外の食事の場、子供たちの遊場、観葉植物の置き場、近隣との交流の場として実用的に使われ、この家の象徴空間となっています。
建築は機能と情緒の絶妙なる融合が命題である。と思いそれを目指しています。

BACK
NEXT
.